展覧会などに行ったはなし(夏,1)

ベルギー奇想の系譜(Bunkamura

評判がよかったのと広告がかわいかったのでそれなりに期待していったものの,個人的な好み(18世紀以降の写実,風景や肖像が好き)に合わず絵画はちょっと不満足だった。ただしモチーフがはっきりしておりごちゃごちゃ色々描いてあるので,解釈が好き派には鑑賞しやすい作品が多いのではないかと思う。

キリスト教絵画はそれなりに見てきたつもりだったが,恥ずかしながら「聖クリストフォロス」や「聖アントニウスの誘惑」はほとんど題材として認識していなかったので興味深く観た。”キモかわいい”クリーチャーを描きたいがためにわざわざ聖書を引いてきているようで,ちょっといじらしい。

一方,いままでほぼ興味がなかった立体にぐっとくるものが多かった。具体的にはヤン・ファーブル,トマス・ルルイがそれ。シニカルなスタンスとどこかかわいらしいキャッチ―な造形が「なんとなくキモい」,「なんとなくかっこいい」フォルムに収まっており,なんともいえない魅力を感じる。

それと,点数は少なかったがパナマレンコの紹介もよかった。活動の詳細は把握していないが,変な発明おじさんということらしい。ちょっと古い冒険ものSF作品のようなあたたかみと茶目っけが愛らしい。

全体的には,ボス派作品をアニメーション化したものを流すしかけや,細かいエッチングの拡大図の掲示など鑑賞者にやさしいつくりだった。作家に注目したのではなく「キモかわいい」ベルギーの作品をアンソロジー的に集めてあるので,「絵画はよく知らないのでちょっと……」という人も気軽に楽しめるかもしれない。

 

TOKYO ART CITY by NAKED(Gallary AaMo)

はやりの”トーキョー”概念×プロジェクションマッピング。彩色とキャッチ―さはセンスがよかったので,一見の価値はあると思う。個人的には入口すぐの新宿ゾーンがおすすめ。

投影された壁面に絵を描けるインタラクションや,東京の交通状況を指定して表示できる俯瞰ゾーンはつくりがよかったのではないかと思う。後者の交通状況について,リアルタイム表示とも読める説明があったが,もう少し詳細が知りたかった。この類のイベントに情報の厳密な正確性は意味がないと思うが,ちょっとハッとさせられるような読み取りができる工夫*1が可能だったのではないかなーとも感じた。

一方で少々安っぽく感じた面もある。数分にいちど挟まるロボットダンスショーや東京タワーゾーンの画面表示,お台場手前の日本建築模型プロジェクションマッピングがそれだ。秋葉原ゾーンのガチャも,会場が暗いせいもあるかもしれないが,もうちょっと「ぜひ回したい!」となる誘導があり得たのではないかという気がしている。

とはいえ,全体的にSFイメージ実装の過剰演出感を売りにしているところは成功の印象がある。また,ロボットダンスについていえば,かなり高頻度で展示全体を巻き込んで行われるのだが,これが鑑賞体験を細切れにしてくるのがプラスに働いていると感じた。ひとつひとつの作品をじっくり鑑賞する,というよりは,大量に流れている情報を動き回りながら流れとして体験するほうが正しいように思う。

正直なところ「情報都市トーキョー!」といったようなスローガンには食傷ぎみだが,キャッチ―な演出はよかったのではないかというのが感想だ。

*1:羽田に向かう航空機が複雑な軌道を描いているのが見えるとか?